ストーリー
2022年1月30日
KSTNの生徒学生がKumamoto Education Weekで熊本市の生徒学生と一緒に登壇しました
2022年1月31日、熊本市教育委員会が主催された熊本Education Weekに、きょうそうさんかくたんけんねっと(以下、KSTN)の生徒メンバーが「私たちの夢が未来を創る~KSTN×Kumamoto EduAction」において、熊本市の高校生と繋がり教育について対話するセッションに参加されました。
参加されたのは、KSTNの竹内陽渚さん(広島県の大学生)、山本詩央理さん(東京都の大学生)、小島萌々花さん(福井県の高校生)、楳原まひろさん(東京都の高校生)、七島海希さん(福島県の中学生)、そして熊本市の地域エコシステムのメンバーとしてKSTNの運営メンバーでもある王柏倫さんと、熊本市の6名の高校生(小川心さん、中川菜月さん、松村美春さん、竹本智哉さん、李俊希さん、濱口託利さん)です。
セッションでは、自己紹介とKSTNの紹介に続いて、まず、「なんでやねん遊び」が繰り広げられました。普段「なんで?」「どうして?」と思っていても、聴いてもらえない、もしくは、「言っちゃいけない」と思われている当たり前の慣習や決まりごとについて、「疑問を持ってもいいんだよ」と伝えたい想いから生まれたものです注。
「当たり前のこと」への「なんでやねん」として挙げられたのは、まず「服装あるある!」でした。「制服が高い(海外では数千円なのに日本では数万円!)」、「高校生に相応しい格好をしろと言われるがそれってどういう服装?」、「(私服通学の学校だが)可愛い服装をしていると電車で痴漢に遭いやすいと言われ、わざと派手な格好をしている。なぜこちらが痴漢予防しなければいけないのか?」「寒いのになぜ決められた制服セーターしか着てはいけないのか(コロナで換気のため自由度が増えた!)」など、教師や大人・社会から求められる高校生の服装・制服について疑問が相次ぎました。「校則あるある!」では「学校でなぜスマホを使えないのか?」「罰として没収され1週間返して貰えなかった友達がいる。なぜ?」「校則をどうして学生が決められないのか」という疑問に対し、東京の生徒の学校では、制服が自由になった、教師と話し合って校則を変更出来た学校の歴史や経験が語られました。すると今度は「東京の学校では変えられて他の学校で変えられないのはなんでだろう?」という新たな疑問や「学校では文句言ったら成績に響くぞ、と生徒が思ってしまっているのかもしれない」という生徒側の諦めや恐怖心についても推測されました。さらに、「休み」について、「中国の昼休みは2時間あり、昼時間は自宅に帰ってご飯を食べたり寝たり出来たが、日本の昼休みはなぜ短いのか」、「世界的に見ても夏休みが短い。そのうえ宿題・課題多くじっくり休む時間が足りない」、「大学生になったら一気に夏休みが長くなって課題も少なくなるのになぜ高校まではそんなに厳しいのか」という、他国や大学との比較からの「なんでやねん」も相次ぎました。学習に関連した内容では、「朝学習(7:45から8:10)がキツイ。先生もやりたくないのではないか」、「定期考査が1年に12回以上ある。シンガポールは大きいテストは年2回しかない。なぜ毎月こんなにテストばかりやらなければならないのか」、「図形とか微積とか、使うとこある?何のためにやってるの?って思う」、「高3になると受験一色になるのはなぜ?部活も生徒会もこういう活動もやめて1年間受験に専念するって、大学に入る過程として本当にいいのかな?」といった思いが語られました。
次に、OECD未来の教育とスキル2030プロジェクトから、OECDの田熊美保シニアアナリスト、KSTN学生メンバーの南朴木里咲さん(大学1年生)、フランスのリヨンからMaximeさん(大学3年生)の3人の動画が紹介されました。
まず、OECDの田熊さんより、OECDラーニングコンパスは、生徒や社会の一人一人が、自分自身、他者、そして、地球のウェルビーイングの実現を目指すことが大切であること、そして、個人のウェルビーイングには、仕事、住宅、生活の質、ワークライフバランス等様々な要素があり、それは、社会全体の豊かさ(経済資本、人的資本、社会資本、自然資本)と相互関係であることが紹介されました。また、社会全体のウェルビーイング実現のためには、一人一人個人の特性が違うことを認めることが重要であること、したがって、一人一人違うペースやルートでゴールを目指して良い、というエージェンシーの大切さについてお話がされました。また、ラーニングコンパスの中核をなす基盤として、読み書きなどの認知機能や社会情動性の発達と、心身および目に見えない健康(Health foundation)が、いかに密接に影響し合っているか、生徒の体験紹介の導入として、強調されました。
次に、南朴木里咲さんより、8歳のときにいじめにあったものの、先生に言ったが十分に対応してもらえなかった経験から、自分の被害はいじめとは言えないのではないか、自分はいじめの被害者に値しないのではないかと約10年間もいじめ被害について語ることが出来なかった経験が共有されました。加えて、中学生の頃から悩んでいる片頭痛についても目に見えない健康課題として共有されました。里咲さんは、「私の経験だけではなくトランスジェンダーの子やヤングケアラーの人も、自分の時間を自由に過ごせないかもしれない。家庭で相談出来なければ苦しみを打ち明ける人がいないかもしれない。家庭や学校にしか逃げ場のない子ども、特に幼い子どもたちは自殺を選んでしまうかもしれない。なぜなら、目に見える印象では、私が述べたような健康上の問題を抱えているかどうかは分からないからです。学校の先生には、生徒の家庭環境は1人1人違って当たり前だけど、『先生』という存在は皆にとって等しくあるのだから、生徒との関わり方、サポートを量的・質的に平等にするのではなく、問題に最後まで向き合うといった点で平等な存在であってほしい。」と、目に見えない心身の被害が子どもに与える危険性について問いかけました。続いて、フランスの大学生Maximさんからは、心理的な問題から統合運動障害になったこと、その結果学校を辞めざるを得なかったことを打ち明け、それはシステムが自分が学校にいることを許さなかったためである、と考えました。Maximさんは、それを解決することとして、人々の「empathy(共感)」を挙げました。「算数や読み方を学ぶことにトラブルを抱える人がいる」「人にはそれぞれに学ぶ方法が異なるのだ」と理解することで、特に教師がそれを理解してくれることで、「共感」をシステムの中で育むことが出来るだろう、そしてそれは全てのシステムを改善し、人々に根付く中心的な価値としてよりたくさんのことを創造し、より高い柔軟性を育むことができるであろうと述べました。
この動画を見てから、熊本市及びKSTNの生徒・学生からは、「言いにくいことを友達や先生に話せる機会を作ることが大事と感じた。」「共感を得ることが大事だということに共感した。熊本Education weekやKSTNの活動が浸透してウェルビーイングの考え方が広まっていくといいと思う。」「心の健康を解決することが一番。その個人のウェルビーイングが国のウェルビーイングに繋がる。個人の関わりを増やしていかなければいけないと思った。」「里咲さんのお話で、目に見えない健康問題があることを知った。現在はヤングケアラーが多くなっており、その人たちにも周りで相談できる場所を作る必要がある。これからのものをより良いものにするには、生徒、先生、地域の人々が手を取り合うことが重要だと思う。」といった鋭い意見が述べられました。
このように、熊本Education weekに登壇された熊本市の高校生とKSTNの生徒・学生メンバーは、異なる地域での異なる学校、決まりごとがあることを共有し、目に見えない病に苦しんでいる人への「共感」が社会を変革するための重要なことであることを感じられました。オンラインの開催でしたが、熊本市と日本の他地域、そしてフランスの生徒・学生が繋がったこと、生徒さんたちの深い考えとその共有が、我々視聴者に多くの新しい学びと気づきをもたらしてくれたことに感謝したいと思います。
注:子どもの権利条約関西ネットワークHP参照
https://kodomonokenrikansai.wixsite.com/network